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学校安全教育調査研究委員会の事業2021/2022について
~スポーツ歯科における安全教育と「マウスガードの普及・周知」~
日本学校歯科医会 副会長 野村圭介
「東京2020 オリンピック・パラリンピック」は、開催が1年延期となりその開催自体も賛否両論がありました。しかしながら、出場された選手たちの躍動する姿や思いは、私たちに一方ならぬ感動を与えてくれ、スポーツのすばらしさが十分に伝わってきました。
特に今回のオリンピックでの日本人選手の活躍は目覚ましく、金メダル27個・銀メダル14個・銅メダル17個の合計58個のメダルを獲得しています。
そのような中、金メダルを2個も獲得した大橋悠依選手や銅メダルを獲得した村上茉愛選手の歯科矯正の姿はとても印象的でした。これらの結果を大舞台で出すことができたのは、子供の時からその競技に真摯に向き合い、並々ならぬ努力といくつもの試練を乗り越えてこられたからこそだと思われます。
スポーツ歯科は、スポーツによる歯の喪失や口の外傷を防ぎ、歯・口の健康や歯並びを整えるなどして、スポーツ選手が一人ひとりの能力を最大に発揮できるように取り組んでいる歯科のことです。
2011年制定された「スポーツ基本法」には歯学の役割が明記されており、2012年のスポーツ基本計画では歯学が他分野と連携しながら研究を進めることが求められており、医学、生理学、心理学などとともに、歯科はスポーツにおいても重要な役割を担うようになりました。
スポーツ歯科の重要な役割の一つは「スポーツで前歯を失う子供を減らしたい」ということです。前歯を失うとその後の人生のQOLに大きく係ってきます。安全教育に関する「危険予測学習」やマウスガード装着の普及や啓発に取り組むことが重要な役割と言えます。
スポーツで前歯を失う中学生や高校生は多く、それを防ぐためには、ルールの理解や技術の習得、用具の管理とともに並行して安全教育を行うことが重要です。
独立行政法人日本スポーツ振興センターの体育活動における過去のデータから、どの競技で外傷が多く起こっているのか、また、どの部位で外傷が多いのかも分かっています。
その医学的なエビデンスを基にサポートするとともに、安全具の装着も重要です。中学校ではバスケットボールのけがが多く、高等学校ではバスケットボールに加え、野球のけがも多い状況です。また、「歯の外傷」ではその部位は上の前歯に集中しており、 こうした体育活動やクラブ活動においてマウスガードの装着が徹底されれば「歯・口の外傷」は大きく減ります。
日本学校歯科医会では、公益財団法人日本高等学校野球連盟、独立行政法人日本スポーツ振興センターの協力のもと浦和学院高等学校と川越工業高校に研究指定校になって頂き、「安全教育」とともに、選手個々に「マウスガード」を作成し、その指導管理について4年間の実績を積み重ねてきました。また、甲子園出場校にもアンケート調査を取らせて頂き「歯・口の外傷」について意識調査、実際の対応などのデータを分析してきました。
今期は、全国展開を目指して、研究指定校に浦和学院高等学校のほかに岩手県の花巻東高等学校、大阪府の大阪桐蔭高等学校、愛媛県の新田高等学校の4校にご協力頂き事業を展開しています。
マウスガードを実際に使用している選手も多くみられるようになりました。その選手にあった適正なマウスガードが装着されることがとても重要です。またそれは安全教育と並行して行われていることが大切であり、今回の事業は、過去のデータをもとに日本学校歯科医会が実施するオフィシャルな事業です。
今回の事業を通して危険を予測し、安全確保の方法を学び実践することの重要性そして安全具としてのマウスガードの有用性について広く周知頂くことを目的としております。